ラッツ&スターのメンバーとして親しまれ、タレントとしても長年お茶の間を沸かせてきた桑野信義。彼が直腸がんのステージ4を宣告され、ストーマ造設手術を受けたことを公表した際、日本の芸能界には大きな衝撃が走った。一時は歩くことさえままならず、排泄のコントロールを失う恐怖と向き合いながら、彼を支え続けたのは「もう一度ステージに立ち、トランペットを吹く」という剥き出しの執念だった。
腹部に装具を装着した状態での腹圧のかけ方、演奏時の体幹コントロール。健常時とはまったく異なる身体感覚を一から再構築する作業は、想像を絶する困難を極めた。それでも桑野は、自らをオストメイトと堂々と称し、ブログやテレビ番組を通じて装具交換のリアルや日々の葛藤をユーモア交じりに発信し続けた。その姿は、病を隠して孤立しがちだった多くの当事者に「恥じることなど何一つない」という強烈なメッセージを放っている。