現役時代の白鵬を語る上で欠かせないのが、超人的な肉体とその裏側に隠されていた傷の深さだ。土俵上では常に冷静沈着、無傷の巨木のようにそびえ立っていたが、実際は満身創痍の状態で戦い続けていた。右肘の靭帯断裂、両膝の半月板損傷、足首の慢性的な痛み。現役晩年は、朝起き上がることすら困難な日があったと近親者は明かす。
それでも土俵に上がり続けられたのは、伝統的な四股や鉄砲といった基礎運動に加え、最先端のスポーツ科学や分子栄養学を貪欲に取り入れたからだ。単に体重を増やすのではなく、関節の可動域を限界まで広げ、衝撃を逃す身体構造を独自に作り上げていた。現役最終場所となった2026年名古屋場所で全勝優勝を果たした際、右膝はすでに限界を迎えていたという。まさに精神力と肉体改造の極限が生んだ奇跡だった。