大相撲界において最も残酷で激しい境界線と言われるのが、「十両(関取)」と「幕下以下(力士養成員)」の境目です。この一枚の番付の壁には、想像を絶する経済格差と生活環境の差が存在します。
幕下以下の力士(幕下・三段目・序二段・序ノ口)には、日本相撲協会からの基本給(月給)が一切支給されません。なぜ無給なのかというと、協会の規定上、幕下以下は一人前のプロ力士ではなく、相撲道を学ぶ「力士養成員(見習い)」という位置付けになっているためです。支給されるのは年6回の本場所ごとに支払われるわずかな「力士養成員手当(場所手当)」のみです。
幕下以下の力士は部屋での衣食住が完全に保証されているため、日々の生活費に困窮して飢えることはありません。しかし、手元に残る現金収入は年間数十万〜100万円程度にとどまります。十両に上がれば一瞬にして月100万円以上の給与と専用の個室、付け人が与えられますが、幕下に陥落した瞬間に給料はゼロとなり、再び大部屋での雑用と付け人生活へと逆戻りします。「関取と幕下の差は天と地」と称される理由は、まさにこの極端な給与体系にあるのです。