名古屋の味噌について語る際、最も混同されやすいのが八丁味噌と赤味噌の違い、そして「赤だし」との関係性です。これらは日常会話で同一視されがちですが、原料や製法、歴史的背景において明確に区別されます。
まず「赤味噌」とは、味噌汁や料理全般において色が赤みを帯びている味噌全般を指す広義の呼称です。仙台味噌や津軽味噌のような米麹を使った赤色辛口味噌も赤味噌に含まれます。これに対し、中京地方で親しまれている味噌の正体は、大豆と塩、水のみを原料とし、大豆そのものを麹にして発酵させる豆味噌です。
そして、豆味噌の中でも別格の存在として位置づけられるのが「八丁味噌」です。愛知県岡崎市の岡崎城から西へ八丁(約870メートル)離れた八丁村(現在の八帖町)で誕生し、現在も昔ながらの製法を守り続ける岡崎八丁味噌の蔵元である「カクキュー(合資会社八丁味噌)」と「まるや八丁味噌」がその歴史を牽引しています。杉桶に仕込み、職人が絶妙なバランスで職人技のピラミッド状に巨石を積み上げ、二夏二冬(2年以上)もの歳月をかけて天然醸造させる姿勢は、数百年間変わっていません。
一方、飲食店でよく目にする赤だしと豆味噌の違いにも注目すべきポイントがあります。「赤だし」とは、豆味噌をベースにかつお節などの出汁を加え、米味噌やみりんなどを調合して飲みやすく仕立てた合わせ味噌、あるいはその味噌汁を指します。渋みや濃厚さが際立つ純粋な豆味噌に比べ、赤だしはまろやかで日常の食卓に取り入れやすい仕上がりになっています。