株価の急変動を語るうえで避けて通れないのが、世界的なメガヒットとなった抗がん剤「エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)」である。同薬は第一三共が独自に創製した抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる技術プラットフォームから誕生した。
抗体薬物複合体(ADC)とは、がん細胞の表面にある特定の抗原に結合する「抗体」と、がん細胞を攻撃する「薬物(ペイロード)」を特殊な「リンカー」で結合させた次世代の抗がん剤だ。狙ったがん細胞に ピンポイントで毒性を届けるため、高い薬効と副作用の軽減を両立させる。第一三共はこのリンカーとペイロードの接続技術において世界最高峰の特許を有している。
イギリスの英大手製薬アストラゼネカとの世界的戦略提携により、エンハーツは乳がん、胃がん、肺がんなどのHER2発現がんを対象に世界中で承認を拡大中だ。現在もHER2低発現がんや早期乳がんへの適応拡大に向けた相次ぐ第III相臨床試験が進行しており、これらの結果がポジティブであるか否かが、市場の株価形成にダイレクトに跳ね返ってくる。