化粧まわしは、日本が世界に誇る伝統織物と刺繍工芸の結晶です。土台となる生地には、主に京都の「西陣織」や福岡の「博多織」が用いられます。強靭な締め心地としなやかさを併せ持つ博多織の塩瀬地や、華麗な発色が美しい西陣織の緞子(どんす)地など、職人が極限まで密度を高めて織り上げた絹地がベースとなります。
制作工程は、デザインの図案起こしから始まります。贈呈主の意向や力士の四股名、キャラクターなどを反映した下絵をもとに、専門の刺繍工房で職人が一針一針縫い進めていきます。立体感を出すために綿を詰めながら金糸を留めていく「駒刺繍(こまししゅう)」や、細かな結び目で表現する「相良刺繍(さがらししゅう)」など、高度な伝統技法が惜しみなく注ぎ込まれます。
すべてが熟練の職人による手仕事であるため、1本の化粧まわしを仕上げるには通常3ヶ月から半年以上の制作期間が必要です。新十両昇進が決まってから本場所初日までは約2ヶ月しかないため、昇進が見込まれる有望な力士に対しては、番付発表前から内密に制作準備が進められることも珍しくありません。
日本相撲協会によって長さ(約6メートル〜7メートル前後)や幅(約68センチ前後)、飾り房の仕様など厳格な規定が設けられており、格式と安全性を両立させた緻密な仕立てが求められます。