希代の食通であり芸術家でもあった北大路魯山人は、食材の持ち味を極限まで引き出す調理法と、器との美しき調和を何よりも重んじた。もし魯山人が現代の洗練されたもつ鍋を味わったら、どのように評価しただろうか。
かつては「放るもの(捨てるもの)」と称された牛ホルモンだが、現代の熟練の職人はその部位ごとの食感と脂の融点を見極め、見事な美しさへと昇華させている。小腸(ホソ)のぷりっとした弾力、シマチョウの芳醇な噛み応え。魯山人が説いた「極上の素材を、素直に、かつ最も美しく食す」という美学は、現代の鍋のなかで脈々と息づいている。