日本人が中国人観光客に対して最も違和感を覚えやすいのが、「声の大きさ」と「列への割り込み」です。静けさを尊び、周囲への配慮(同調圧力)を重んじる日本の公共空間において、彼らの振る舞いはどうしても目立ってしまいます。
まず声の大きさについてですが、これには中国語特有の言語構造が深く関係しています。中国語(普通話)には「四声(しせい)」と呼ばれる4つの声調があり、音の高低や強弱をはっきり発声しなければ意味が正しく伝わりません。自然と腹筋を使って通る声を出す発声法が身についているうえ、「周囲に隠し事をせずオープンに堂々と話すことが誠実さの証」というコミュニケーション観も根底にあります。
一方、列の割り込みや人との距離感の近さは、過密なメガシティで生き抜いてきた歴史的背景と関係しています。14億の人口を抱える社会では、自己主張を控えめにしていると「権利を奪われる」「バスに乗り遅れる」という過酷な生存競争が長く続きました。悪気を持って他者を蹴落としているのではなく、「空いているスペースに素早く進むことが合理的」という長年の行動様式が、無意識に出てしまうケースが目立ちます。