本書が他のマーケティング書と一線を画す最大の理由は、概念論にとどまらず、高度な確率統計モデルを実務に落とし込んでいる点にあります。その頭脳を担ったのが、元USJチーフ・アナリストの今西聖貴氏です。数学マーケティングの土台を支える2大理論をわかりやすく解説します。
■ NBDモデル(負の二項分布モデル)
消費者が一定期間内にある商品カテゴリーを何回購入するかという「購買頻度のばらつき」を表す確率モデルです。市場全体の購買行動は、少数のヘビーユーザーと多数のライトユーザー(およびノンユーザー)で構成されており、ポアソン分布とガンマ分布を掛け合わせた数式によって驚くほど正確に予測できます。
■ ディリクレモデル(Dirichlet Model)
複数の競合ブランドがひしめく市場において、各ブランドの購入確率がどのように分散するかを予測する多変量モデルです。ブランドの市場シェアと消費者の購買パターンの間には普遍的な数学的秩序が存在し、カテゴリーの特性と自社のプレファレンスが定まれば、競合からどれだけシェアを奪えるかが数式で導き出されます。
これらのモデルを理解することで、「自社の売上が伸びないのは広告の表現が悪いからか、それとも市場の上限値に達しているからか」という根本的な問いに対し、感情を挟まずに客観的な解を導き出せるようになります。