2000年代初頭、伊勢佐木町に誕生した「横濱カレーミュージアム」の存在を忘れることはできない。全国から選りすぐりの名店が集結し、キュレーターとして辣腕を振るった水野仁輔氏らの熱狂的な仕掛けは、日本人のカレー観を根底から揺さぶった。このムーブメントが契機となり、一過性のブームに過ぎなかったスパイス探求は、確固たるカルチャーへと昇華したのである。
ミュージアム閉館後もその遺伝子は街に残り、独立独歩のシェフたちによってさらに先鋭化した。単に辛いだけではない。生薬のような芳香、出汁との融合、発酵調味料の導入――日本のフードサービス産業全体に影響を与える革新的な試みが、今この瞬間も横浜の小さな厨房で繰り返されている。