既成の慣習に風穴を開け、記者会見のあり方を根底から揺さぶった象徴的な存在が、東京新聞の望月衣塑子記者だろう。官房長官会見において、儀礼的な質問の枠を飛び越え、納得のいく回答が得られるまで執拗に食い下がるそのスタイルは、激しい賛否両論を巻き起こした。予定調和を重んじる記者クラブの秩序から見れば異端児でありながら、密室化する政治への不満を抱く多くの市民からは熱烈な支持を集めた。
彼女の取材姿勢を原案として制作された映画『新聞記者』が社会現象となった背景には、メディアの「忖度」に対する市民の強烈な不信感があった。政権の圧力や組織の論理に抗い、孤立無援の中で真実を追うジャーナリストの姿は、多くの観客の胸を打った。組織の調和を守るための沈黙か、それとも批判を恐れぬ問いかけか。あの一連の波紋は、永田町の記者たち全員に対し、自らの職責とは何なのかを厳しく問い直す契機となった。