栗林という存在が世界的な知名度を獲得した契機は、巨匠クリント・イーストウッド監督が手がけた二部作の存在を抜きには語れない。米側からの視点を描いた『父親たちの星条旗』と対をなす『硫黄島からの手紙』において、主演の渡辺謙が体現した栗林像は、ステレオタイプな狂信的軍人像を完全に解体してみせた。
駐米武官としての経験を持ち、アメリカの工業力と国力を誰よりも熟知していた栗林。イーストウッドは、祖国を愛しながらも勝ち目のない戦いを強いられた知米派将校の悲劇性を、余分な感傷を排した演出で描き切った。渡辺謙の重厚な演技は、軍司令官の威厳と、部下や家族への細やかな慈愛を同居させ、敵国であったアメリカの観客にも深い共感を呼び起こした。
映画産業の潮流においても、日米双方の視点から同一の戦いを公平に描く試みは画期的な試みだった。渡辺謙が演じた栗林の姿は、単なる歴史の再現ではなく、普遍的な組織人の苦悩を映し出す鏡として、公開から歳月を経た現在も国際的な評価を保ち続けている。