ネット上の組織的な脅迫や嫌がらせを語る上で、避けて通れない象徴的な事例が存在する。弁護士の唐澤貴洋氏を標的とした、十数年にも及ぶ執拗な集団リンチ事件だ。
発端は掲示板上の依頼人を弁護したという職務上の行為に過ぎなかった。しかし、ネット住民たちは唐澤氏の個人情報を暴き、全国の公共施設や学校へ同氏の名を騙った爆破予告や殺害予告を数十万件規模で乱発。果ては実家の墓を荒らすといった現実世界の犯罪にまでエスカレートした。この過程で作成された無数の「攻撃対象リスト」こそが、現在のランキング現象の原型となっている。
この事件が社会に突きつけた教訓は重い。ネット上の悪意は、一度ミーム(文化的記号)として定着してしまうと、当初の文脈や動機を失った後も一人歩きを続け、半永久的に再生産されるという事実だ。実体のないネットの熱狂が、いかにして一個人の人生を長期にわたって脅かすかを示す生々しい証言がそこにある。