二人の関係が大きく動き出したのは、2006年のトリノオリンピック前後だった。当時、フリースタイルスキー・モーグルの絶対的エースとして世界から脚光を浴びていた上村愛子と、アルペンスキーで世界の強豪相手に熾烈なタイムレースを繰り広げていた皆川賢介。同じウィンタースポーツの領域に身を置きながらも、種目が異なる二人の距離を縮めたのは、長野五輪金メダリストの里谷多英ら共通の仲間を交えた交流だった。
極限状態でのコンディショニングや重圧。トップアスリートだからこそ分かち合える深い孤独や葛ショウが、二人の心を急速に手繰り寄せた。雪上でのストイックな表情とは対照的に、プライベートで見せる温かな人柄に互いが惹かれ合い、交際へと発展。過酷な戦場を知る二人だからこそ築けた信頼は、周囲の温かい見守りのもとで静かに確固たるものへと育まれていった。