有清園の杉苔の中に佇む木造の簡素なお堂が、重要文化財に指定されている「往生極楽院(おうじょうごくらくいん)」です。平安時代末期の1148年に建立されたと伝わり、恵心僧都源信の極楽往生の思想を色濃く反映しています。
堂内に足を踏み入れると、中央に安置された国宝「阿弥陀三尊像」が圧倒的な存在感で迎えてくれます。お堂の大きさに比べて像が大きいため、天井を船底のようにくり抜く「船底天井」の技法が用いられており、かつては極彩色で描かれた極楽浄土の天女や菩薩の絵画が天井を彩っていました。
特に注目すべきは、阿弥陀如来の両脇に控える観世音菩薩と勢至菩薩の姿勢です。正座の状態で少し前屈みになり、膝をわずかに開いて腰を浮かせる「大和坐り(やまとずわり)」をとっています。これは、救いを求める人々のもとへ今すぐにでも駆けつけようとする慈悲の表れとされており、平安仏教美術の最高傑作として国内外から絶賛されています。