重要無形文化財保持者(人間国宝)として梨園に君臨する七代目 尾上菊五郎の功績は計り知れない。父である名優・六代目 尾上菊五郎の芸風を継承しつつ、世話物における「江戸の匂い」を現代に伝える第一人者として、役の心理描写をさらりと自然に見せる至高の芸を確立した。『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助や『魚屋宗五郎』など、七代目が魅せる舞台は常に江戸の生活感と風情に満ちあふれている。
七代目の芸の真髄は、徹底したリアリズムと軽妙洒脱さの同居にある。気負いのない台詞回し、無駄のない所作、そして客席を一瞬で江戸の下町へと引き戻す空気感。名門の重圧を受け止めながらも、自らのスタイルを崩さず磨き抜いてきたその姿勢こそが、音羽屋のブランド価値を今日まで高め続けた原動力だ。