西田敏行という存在なくして、現代の日本映画界を語ることはできない。国民的人気シリーズ『釣りバカ日誌』で見せた「ハマちゃん」こと浜崎伝助役は、日本中の映画館を笑いと涙で包み込んだ。愛嬌と人間味あふれるコメディ映画の金字塔を打ち立てる一方で、その振り幅の広さは観客を圧倒し続けた。
その極致とも言えるのが、北野武監督によるバイオレンス大作『アウトレイジ ビヨンド』だ。花菱会の若頭・西野役で見せた凄惨なドスの利いた関西弁と、底知れぬ狂気。ハマちゃんで見せた屈託のない笑顔を完全に消し去り、冷酷なヤクザの凄みを放つ姿に、観客も批評家も息を呑んだ。陽と陰、喜劇と悲劇を軽やかに行き来するその怪物的な演技力は、唯一無二の輝きを放っていた。