かつて「吹き抜け=寒くて冷暖房費が高騰する」というのは住宅業界の公然の秘密だった。暖かい空気は上昇し、冷たい空気は足元に沈殿する。物理法則に従えば、上下に大きな空間を抱える住居ほど熱効率で圧倒的に不利になるからだ。
しかし、2026年現在の建築工学は過去の常識を鮮やかに書き換えている。断熱等性能等級6や7(HEAT20 G2/G3レベル)をクリアした高気密高断熱住宅であれば、上下階の温度差はわずか1℃から2℃程度に抑えられる。トリプルガラス入りの高性能樹脂サッシと徹底した隙間(C値0.5以下)の施工管理が、魔法瓶のような保温性能を建物全体にもたらすためだ。
冷暖房費のシミュレーションを見ても、適切な躯体性能さえ確保されていれば、吹き抜けの有無による年間電気代の差額は数千円レベルにとどまる。問題の本質は吹き抜けそのものではなく、建物の基本性能を無視して空間だけを広げてしまう設計ミスにある。