足元の観測データに目を向けると、日本列島の地殻はかつてない緊張状態を保ち続けている。特に注視されているのが、西南日本から太平洋沿岸にかけての広域な歪みだ。村井氏らの解析チームも、紀伊半島から四国、九州東部にかけての電子基準点の挙動を厳戒態勢でモニタリングしている。
南海トラフ巨大地震の想定震源域では、プレートの沈み込みに伴う長期的な沈降と、短期的な隆起の揺らぎが複雑に交錯する。GNSSデータが示す歪みの累積スピードは、場所によって明確な偏りを見せており、地下深くでアスペリティ(固着域)が軋みを上げている様子を示唆する。公的機関の発表する長期確率論だけでなく、こうした日々の微細な地殻変動データを補助線として持つことは、突如として訪れるカタストロフへの備えを現実的なものにする。