生体の停止から腐敗に至るプロセスは、極めて冷徹な生物学的反応だ。日本法医学会が体系化してきた知見に基づけば、心肺停止の直後から細胞内の酵素が自らを消化し始める「自家融解」が幕を開ける。これにより組織が脆弱化し、腸内細菌をはじめとする微生物が無制限に増殖を開始するのだ。
死後変化(自家融解・腐敗)が加速するにつれて、細菌の代謝によって硫化水素やアンモニア、メタンなどの腐敗ガスが大量に発生する。このガスが体内腔に充満することで、腹部や顔面は生前の面影を失うほど膨張する。さらに内圧の高まりに耐えきれなくなった血管や組織から、赤黒い体液が鼻や口を通じて体外へ噴出する。法医学の視点から見れば、1週間という時間は人体の原型を留める限界点に他ならない。