「牛乳を飲めば骨が丈夫になる」。この数十年間、世界中で刷り込まれてきた常識に冷や水を浴びせたのが、栄養疫学の世界的権威であるハーバード大学公衆衛生大学院のウォルター・ウィレット教授らの研究チームだ。
彼らが十数万人以上の医療従事者を数十年にわたって追跡調査した結果、衝撃的な事実が判明した。牛乳の摂取量が多い成人ほど骨折率が下がるという明確な関連性は見出せなかったのだ。それどころか、乳製品の消費量が極めて多い北欧諸国で大腿骨頸部骨折の発生率が高いという、いわゆる「カルシウム・パラドックス」の存在も浮き彫りになった。
骨密度を維持するには、カルシウム単体だけでは機能しない。ビタミンDやビタミンK、マグネシウム、そして適度な骨への荷重刺激(運動)が揃って初めて骨は作られる。牛乳をガブ飲みしたからといって骨が強固になるわけではないという知見は、世界中の栄養指導の見直しを迫る決定打となった。