ここで多くのビジネスパーソンが直面するのが、「自分は何でも屋の器用貧乏に陥っているのではないか」という根深い不安だ。あれこれ手を出した結果、どの分野でも一流になれず、代替可能な歯車として扱われてしまうリスクである。しかし、両者の間には明確な分水嶺が存在する。
器用貧乏は、指示された作業をこなす範囲を横に広げているにすぎない。対して真の多才は、ブレない「核となる強み(コアスキル)」を持った上で、周囲の状況に応じて能力の発揮方法を変幻自在にアジャストさせる。人材開発・人事の現場で高く評価されるのは、単にタスクの数が多い人間ではなく、「状況の不確実性を減らし、チームの成果を最大化できる調整力」を持つ人材なのだ。専門性というアンカー(錨)があるからこそ、異なる領域へ越境しても漂流せずに成果を出せる。