ショーケースの中央でひときわ存在感を放つのが、店名を冠したシグネチャーのムースケーキ「エス」だ。フロマージュブランをベースにした純白のムースは、スプーンを入れた瞬間に空気を含んで淡雪のように崩れ、口に運べば体温で一瞬にしてほどけていく。中には爽やかなレモンピールと甘酸っぱいフランボワーズ、そしてグレープフルーツのジュレが忍ばされ、幾重にも重なる酸味と香味が舌の上で心地よい緊張感を生み出す。
この緻密な計算を手がけるのが、オーナーシェフの中元修平氏である。神戸の名店やフランスでの研鑽を経て培われた技術は、古典的なフランス菓子の骨格を尊重しながらも、現代的な軽やかさと香りの立体感を追求している。素材同士の衝突を恐れず、洋酒の効かせ方やスパイスの余韻によって味の奥行きを構築する手腕は、洋菓子・製菓業界でも群を抜く。