なぜこれほどまでに不信感が募ったのか。事の発端を辿る経緯解説として外せないのは、爆発的普及期に生じた運用の「形骸化」だ。世界的な需要急増のなかで、本来は工業用の赤外線放射温度計を流用した粗悪品が大量に出回った。
商業施設の入り口に置かれたスタンド型デバイスは、通り過ぎる人の額を機械的にスキャンし続けたが、外気温の影響で「32度」や「エラー」を連発。警備員やスタッフも次第に数値を確認せず素通りさせるようになり、形だけの検温が日常化した。「測っているふり」に過ぎない運用体制に対して、利用客側からも「検温に応じる意味があるのか」という疑問と反発の声が上がり始めた。