冬の札幌中心部やすすきの、あるいは国際的人気を誇るニセコエリアで「タクシー乗り場に1時間以上並んでも車が来ない」という光景は、もはや珍しくありません。かつて過剰供給が叫ばれたタクシー業界が一転し、歴史的な供給不足へと陥った決定打は、コロナ禍で進んだドライバーの大量離職と、その後のインバウンドを中心とする急激な需要爆発という需給バランスの完全な崩壊にあります。
国交省北海道運輸局の公示データおよび業界統計を紐解くと、北海道内の実働車両数はコロナ前と比較して約20〜25%縮小した状態から回復していません。車庫に車両はあるものの、ハンドルを握る乗務員がいない「休車」が日常化しているのが北海道のタクシー不足における現在の状況です。
これに伴い実施されてきた運賃改定は、単なる事業者側のコスト転嫁ではありません。北海道のタクシー初乗り運賃(現在)は、札幌A地区(札幌市・江別市など)において普通車初乗り(1.28kmまで)が約670円水準へと引き上げられ、距離加算運賃も見直されました。協会関係者が「改定によって得られた原資の8割以上をドライバーの賃金アップや労働環境改善に充てなければ、新卒や異業種からの採用はおろか、現役の引き留めすら不可能」と証言するように、まさに業界存亡をかけた背水の陣といえます。