かつて大型本として書店店頭を埋め尽くした数々の名作は、現在Amazon Kindleをはじめとする電子書籍プラットフォームでもアーカイブ化が進み、再評価の波が広がっている。印刷物の質感や大型判型の迫力とは異なるが、高精細ディスプレイを通して触れる篠山の作品群は、ライティングの繊細さや構図の計算された美しさをより克明に伝えてくれる。
情報が溢れ、あらゆる画像が瞬時に消費される現代にあって、篠山紀信がフィルムに焼き付けた身体の生々しい重みは、デジタルネイティブの若い世代にも新鮮な驚きを与えている。メディアの形態が出版業界の紙媒体からスクリーンへと移行しても、被写体と写真家が火花を散らして生み出した「写真の熱量」そのものは決して減衰しない。