まずは、日本中を魅了し続ける名作『朝のリレー』の言葉そのものに耳を澄ませてほしい。
カムチャツカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝のモヤの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
ハチクロにまたがる朝の光に目くばせする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経線から経線へと
そうしていわば交代で地球を守る
眠る前の三分間
耳をすますと
どこかで遠い目ざまし時計のベルが鳴っている
それはあなたが投げたバトンを
だれかが受け取った証拠なのだ
地球の自転に伴って「朝」がめぐり、見知らぬ人々の日常が途切れることなくつながっていく。たった数行の中に広がる壮大な叙情とリアルな息づかい。命が世界規模で紡がれている感覚を、これほど優しく鮮明に捉えた現代詩が他にあるだろうか。