昭和の名作群が築いた土台の上で、2010年代以降新たな潮流を生み出したのが京極夏彦作・町田尚子絵の『いるの いないの』(岩崎書店)に代表される怪談絵本だ。古い民家の薄暗い空間、天井の隙間からこちらを見つめる怪しい気配。ページをめくるごとに増していく生理的な悪寒は、現代のホラー映画にも通じる緻密な構図計算によって構築されている。
怪談絵本というジャンルは、単に「脅かす」ことだけを目的としていない。画面の端々に仕込まれた視覚的な違和感や、文章の行間に漂う静寂によって、読者自身の恐怖心を徐々に醸成していく。子どもだけでなく大人までもがページをめくる手を止めてしまう圧倒的な演出力は、児童書の領域を遥かに踏み越えたサスペンス体験を提供している。