完成は1966年(昭和41年)。音楽をこよなく愛された香淳皇后の還暦を祝うため、昭和天皇の発意のもと、皇居東御苑の一角に特別なコンサートホールが計画された。設計を託されたのは、日本の近代建築史に孤高の足跡を刻んだ建築家・今井兼次である。宮内庁が主導したこの一大プロジェクトにおいて、今井は単なる祝賀施設にとどまらない、永遠の美を宿す器を求め続けた。
建物の名称「桃華」は、皇后のお印であった桃、そして誕生月にちなんで名付けられた。収容人数は約200席。巨大な劇場ではない。しかし、ここには皇室私設の空間だからこそ実現できた、途方もない技巧と情熱が込められている。今井は図面を引くだけでなく、職人たちとともに現場に立ち続け、自らの美学を1ミリの狂いもなく具現化していった。