ハリウッド映画『SAYURI』(Memoirs of a Geisha)が西欧社会にオリエンタリズムの幻想を植え付けてから時を経て、近年ではNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』が世界的なヒットを記録した。是枝裕和監督が瑞々しく描いた屋形(置屋)の日常と食、少女たちの絆は、海外のトラベルドキュメンタリー番組でもこぞって特集されている。
この映像カルチャーの浸透は、インバウンド観光産業に爆発的な活況をもたらした。一方で、フィクションと現実の乖離による摩擦も浮き彫りにしている。画面越しに見た夢の世界を追い求め、本物の花街のルールを理解しないまま押し寄せる旅行者は後を絶たない。虚像の美しさに憧れるだけでなく、背景にあるリアルな規律を理解することが、真の文化体験への第一歩となる。