そもそも珠世が鬼舞辻無惨に対してこれほど深い憎悪を抱くに至った背景には、あまりに凄惨な過去が存在する。病弱だった彼女は「病を治したい」という切実な願いから無惨の手により鬼化させられた。しかし、その直後に待ち受けていたのは、理性を失い愛する夫と子供を自らの手で喰い殺すという悲劇だった。
絶望の淵に突き落とされた彼女は、無惨への従属を強いられながらも、爪を研ぎ続けた。鬼の支配の呪縛を自力で解除することに成功した稀有な存在として、陰で生き延びながら復讐の機会を静かに待ち続けたのだ。彼女の生き様は、受動的な被害者ではなく、自らの手で運命を切り拓く強靱な意志の証明である。