『僕のヒーローアカデミア』におけるこの騒動が、単なるネットの過剰反応で済まされなかった背景には、作中のキャラクター設定と歴史的事実の不気味な一致がありました。
炎上の核心となった要因は、主に以下の2点に集約されます。
第一に、「丸太(マルタ)」という単語です。第二次世界大戦期、旧日本陸軍に存在した「関東軍防疫給水部」(通称・731部隊)は、細菌兵器の開発や人体実験を行っていました。その際、実験対象とされた中国人やロシア人、朝鮮人などの捕虜たちを、人間ではなく物資として扱うための隠語が「マルタ(丸太)」でした。
第二に、苗字の「志賀」です。これは赤痢菌を発見した著名な細菌学者・志賀潔(しが きよし)氏を連想させるものでした。
そして最大の問題は、作中におけるドクターの役割そのものでした。ドクターは人間を改造・冒涜して生体兵器「脳無(ノウム)」を製造し、非人道的な人体実験を繰り返す悪の科学者です。「人体実験を行う医師」に「志賀」と「丸太」を組み合わせた名前を付けたことが、被害国側の読者にとっては「過去の凄惨な生体実験の歴史を意図的に揶揄・肯定している」と受け取られてしまったのです。