日本および世界のサーカス史を代表する劇団においても、事故の教訓は深く刻まれています。
100年以上の歴史を誇る木下大サーカスは、日本を代表する伝統劇団として発展する過程で、昭和の時代に演者の負傷や動物関連のトラブルといった困難を経験してきました。しかし、同団はその都度原因を徹底究明し、独自の厳格な社内安全マニュアルを構築。現在では世界屈指の安全管理水準を誇る老舗として知られています。
また、かつて三大サーカスの一角を担ったキグレサーカス(キグレNewサーカス)の過去においても、空中アクロバットや設営作業時の負傷事故などが記録されています。移動サーカス特有の過密スケジュールや機材への過負荷が問題視された時代を経て、業界全体が安全第一の運営へと舵を切る大きな契機となりました。
世界的エンターテインメント集団であるシルク・ドゥ・ソレイユの死亡事故も、日本を含む世界の舞台芸術界に大きな衝撃を与えました。2013年にラスベガスで開催されていた常設公演『Ka(カー)』において、ワイヤーで吊り上げられていた女性パフォーマーが約15メートルの高さから落下し死亡する事故が発生。調査の結果、高速で巻き上げるワイヤーが滑車から外れて切断されたことや、機器の摩耗が原因であると判明しました。この真相解明は、ハイテク機器を多用する現代サーカスにおいて、機械的・電子的制御の多重バックアップがいかに不可欠であるかを世界に知らしめました。