なぜ東北をはじめとする各地で、高さ10メートルを超えるような巨大防潮堤が建設されたのでしょうか。その原点には、2011年の東日本大震災における壊滅的な被害があります。
震災前の防潮堤は、過去に発生した数十年に一度クラスの高潮や津波を想定して設計されていました。しかし、マグニチュード9.0の超巨大地震が引き起こした大津波は設計高をはるかに越え、堤防自体の破壊や決壊を引き起こして甚大な被害をもたらしました。
この痛烈な教訓を経て、国と自治体は津波対策の設計思想を根本から改定し、津波を2つのレベルに区分しました。
・レベル1津波(L1津波):
数十年から百数十年に一度の頻度で発生する津波。「防潮堤によって海岸線で完全に食い止め、背後地の浸水を防ぐ」ことを目指します。
・レベル2津波(L2津波):
千年に一度とも言われる最大クラスの津波。防潮堤だけで完全に防ぎ切ることは現実的に不可能なため、「防潮堤が越流されても倒壊せず粘り強く耐え、浸水速度を遅らせて住民の避難時間を稼ぐ(減災)」という思想へ転換しました。
巨大防潮堤が必要とされる最大の理由は、この「L1津波を確実に遮断し、万一のL2津波時にも壊滅的な津波エネルギーを削ぎ落として命を救う猶予を生み出すため」に他なりません。