主人公・プンプンは、ひよこのような極めてシンプルで落書きのようなキャラクターとして描かれる。周りの人間たちがリアルな劇画調で描かれる中、彼とその家族だけが徹底して記号的だ。この対比こそが、作品最大の仕掛けであり、読者の没入感を異常なまでに高める要素となっている。
感情が高ぶると異形に変化し、時には黒い塊となり、時には巨大な存在へと変貌するプンプンの姿。それは、自分自身をうまく表現できない若者の内面そのものだ。SNSで「何者か」演じなければならない現代人にとって、顔のないプンプンは自分自身の分身に他ならない。鏡を見るような感覚で作品に対峙するからこそ、読者は彼の苦悩を他人事として処理できないのだ。