オグリキャップの物語が人々の琴線に触れ続ける最大の理由は、その生い立ちにある。地方の笠松競馬場でデビューし、圧倒的な戦績を引っ提げて日本中央競馬会(JRA)へと移籍したシンデレラストーリー。良血馬が幅を利かせるエリートの世界へ、泥に塗れた地方出身馬が単身殴り込みをかける構図は、昭和から平成へと移り変わる激動の日本社会で戦う人々の姿と重なり合った。
その激闘を支え続けたのが瀬戸口勉調教師だ。過密なローテーションに耐えうる頑靭な体を作り上げ、幾度となく脚元の不安と戦いながら愛馬を鼓舞し続けた。中央と地方の垣根を越え、日本中のファンを巻き込んだ「オグリフィーバー」は、管理する人間側の深い愛情と、それに応え続けたタフな馬の信頼関係が生み出した結晶に他ならない。