だが、この奇跡的な逆転劇の裏には、文字通り血の滲むような制作現場の混乱と衝突が存在していた。東宝株式会社の企画開発チームが極秘裏に進めていた初期稿では、実はもっと救いのない、徹底的な破滅エンドが用意されていたという。東宝社内の試写室では、あまりの陰惨さに幹部陣から「商業映画としての限度を超えている」と猛反発が起きた。
「監督とプロデューサーの間で、毎晩のように怒号が飛び交っていました」。そう匿名で明かす制作デスクの証言は生々しい。「結末を巡って撮影が二週間中断した時期があります。観客に絶望だけを持ち帰らせるのか、それとも痛みを伴う一条の希望を残すのか。徹夜の議論の末に書き直されたのが、現在のラストシーンでした。あの改変がなければ、本作は単なる悪趣味な作品として葬り去られていたはずです」。