なぜTBSは、大会の看板であり視聴率の牽引役でもあった織田裕二の起用に終止符を打ったのか。表向きには「25年の節目」「オレゴン大会を一区切りとする勇退」と発表されたが、テレビ放送業界の内情を探ると複数の複合的な要因が浮かび上がる。
最大の要因は、テレビ局全体を覆う制作費の大幅な見直しである。キー局の広告収入モデルが再編を迫られる中、巨額のギャランティが発生する大物タレントの長期起用や、数十人規模のスタッフを海外へ長期派遣する中継スタイルは維持が困難になっていた。さらに、統括団体であるワールドアスレティックス(World Athletics)が設定する放映権料の高騰も重なり、TBSテレビ側は中継体制の抜本的なスリム化を余儀なくされた。
加えて、局側が中継のトーンを「熱血エンタメ路線」から「競技性を重視したスマートな情報伝達」へとシフトさせようとした編成方針の転換も、長年独自のスタンスを貫いてきた彼との方向性に微妙なズレを生じさせたと見られている。