人生の幕引きをどう迎えるか。樹木希林さんはかねてより「死ぬときは自宅で、畳の上で逝きたい」と公言していた。その願いが現実の試練となったのは、亡くなる1カ月前、知人宅での転倒による大腿骨骨折だった。
緊急手術を経て一時危篤に陥り、肺の機能も低下。病院での集中治療を続ければ延命できる可能性はあった。だが、彼女は自宅へ戻ることを強く望んだ。娘の内田也哉子さんとその夫・本木雅弘さん一家は、自宅に介護ベッドと医療機器を整え、看取りの態勢を敷いた。
旅立ちの直前、かすれゆく意識のなかで希林さんが求めたのは、長年別居を続けながらも魂でつながっていた夫・内田裕也さんとの会話だった。也哉子さんが差し出したスマートフォンのスピーカー越しに裕也さんの声が響くと、希林さんは小さく頷き、感謝とも別れともつかない穏やかな表情を浮かべたという。そして家族の手を握り締めながら、眠るように息を引き取った。苦悶や絶望とは無縁の、あまりにも静謐な最期だった。