長年にわたり巨悪の威厳を体現してきたのが、声優界の至宝・大塚明夫だ。彼が演じるオール・フォー・ワンは、叫び散らす怒りではなく、どこまでも低く静かな笑みの中に真の狂気を宿らせている。相手の心理を弄び、絶望の深淵へと突き落とす台詞回しは、聴く者の骨組みまで揺さぶるような威圧感に満ちていた。
呼吸の置き方一つをとっても、計算し尽くされた余白が存在する。言葉と言葉の間に生じる静寂すらも凶器に変えてしまう演技技法は、まさに長年のキャリアが成せる技だ。正義を標榜するヒーローたちの矜持を言葉巧みに解体していくその声は、視聴者に対して「この男には勝てないのではないか」という根深い絶望感を植え付けることに成功していた。