梅雀自身のキャリアにおいて、その圧倒的な存在感を見せつけた代表作の一つがNHK大河ドラマ『葵 徳川三代』である。若き日の徳川光圀(水戸黄門)を演じた彼は、血気盛んで破天荒な青年期から、思慮深く威厳に満ちた名君へと成長するグラデーションを見事に演じ切った。
伝統的な歌舞伎の素養を感じさせる美しい所作と口跡の良さは、目の肥えた時代劇ファンを唸らせた。だが、梅雀の凄みは古典だけに留まらない。プロ級の腕前を持つエレキベース奏者としての顔を持ち、現代劇のサスペンスや舞台音楽の分野でも独自の地位を築いている。伝統の重圧に押し潰されることなく、自身の趣味や現代的感覚を芝居に昇華させる柔軟さこそが、彼を唯一無二の名優たらしめている。