きらびやかな絶景カフェと鮮やかなコントラストを成すのが、網代や銀座商店街の路地裏にひっそりと暖簾を守る純喫茶・レトロ喫茶の存在だ。熱海海岸の「お宮の松」で知られる名作、尾崎紅葉の小説や映画『金色夜叉』の舞台として名を馳せたこの街には、半世紀以上の時を刻んできた喫茶店が今なお現役で息づいている。
重厚な革張りソファ、サイフォンがコトコトと音を立てるカウンター、色褪せたステンドグラス。昭和の銀幕スターや文豪たちが密談を交わしたであろうその空間で出されるのは、深みのあるネルドリップ珈琲と、昔ながらの固めプリン、そして鮮やかなエメラルドグリーンのクリームソーダだ。デジタルネイティブ世代にとっては新奇なアトラクションであり、年配者にとっては甘美な郷愁。世代を超えた熱狂が、薄暗い純喫茶の店内に静かに満ちている。