数々の名車を世に送り出してきた水戸岡鋭治氏の代表作は、日本の観光列車の歴史そのものと言っても過言ではない。
1992年に登場した787系 特急「つばめ」は、JR九州の名を一躍全国区に押し上げた金字塔だ。ダークグレーの重厚な車体にビュッフェや個室を備えた斬新な意匠は、鉄道友の会ブルーリボン賞をはじめ国際的なデザイン賞であるブルネル賞を受賞した。さらに2004年開業の九州新幹線800系「つばめ」では、新幹線でありながら木製ブラインドやい草の縄のれんを採用し、和モダンデザインの極致を示した。
そして2013年に運行を開始したクルーズトレイン「ななつ星 in九州」は、日本に本格的な豪華寝台列車のブームを巻き起こした。1両に数室のみという贅を尽くした客室と伝統工芸の粋を集めた内装は、最高峰のラグジュアリー体験として世界的な評価を獲得している。
JR九州にとどまらず、富士急行「富士登山電車」、京都丹後鉄道「丹後くろまつ号」、しなの鉄道「ろくもん」、伊豆急行「THE ROYAL EXPRESS」など、全国各地のローカル私鉄でも多くの名作を手掛け、地域の活性化に大きく寄与している。