「なぜ、自分だけが生き残ってしまったのか」。この問いこそが、彼の戦後すべての活動の原動力となった。
特攻前夜、同期の仲間たちに点てた最後の一碗。茶筅を振る音と、すすり泣く声。死地に赴く青年たちが茶を口にし、「美味い」と微笑んで飛び立っていった記憶は、生涯消えることがない。戦後、彼が「一碗からピースフルネスを(Peacefulness through a Bowl of Tea)」というスローガンを掲げて地球を何周も巡ったのは、散っていった戦友たちに対する終生変わらぬ鎮魂の儀式だった。
言葉が通じなくとも、一杯の温かい茶を差し出せば心は通い合う。敵味方を超えて同じ釜の湯を分かち合う茶道の本質を、彼は身をもって世界に示し続けた。