平安の昔、平清盛が海上に比類なき美を現出させて以来、厳島神社は数多の旅人を引き寄せてきた。海上に浮かぶ社殿の荘厳さは、ユネスコ世界遺産委員会からも極めて高い評価を受け続けている。しかし、歴史の重みにあぐらをかく時代は終わった。現在、廿日市市の松本太郎市長のリードのもとで進む「宮島まちづくり再生プロジェクト」が、島の風景を一新させつつある。
訪問税の導入によって財源を確保した市は、電線の地中化や景観に配慮した石畳の再整備を急ピッチで進めた。結果として生まれたのは、観光公害を抑えつつ、中世の趣をより純粋に体感できる洗練された空間だ。夕暮れ時、観光客の喧騒が引き潮のように去ったあとの町家通りには、行燈の柔らかな灯りが揺れ、まるでタイムトラベルをしたかのような静寂が広がる。