物語の核心であり、最大の謎として読者を戦慄させ続けたのが、あの男の「正体」である。彼は古来伝承にある本物の妖怪なのか、それとも卓越したマインドコントロール能力を持つ希代のサイコパスなのか。作中で提示される伏線を辿ると、そのどちらとも解釈できる絶妙な曖昧さが残されている。
『ぬらりひょんの棲む家』が提示した衝撃の結末は、単なる善悪の決着では終わらない。家族が侵略を許してしまった真因は、男の魔力以上に「平穏を装いたい」という家族自身の逃避と共依存にあった。日常を侵食する怪異の正体とは、実は自分たちの心の闇そのものではなかったか。ラストシーンに突きつけられる冷徹な真実は、本格サイコホラーとしての凄みを際立たせている。