欧米やアジア圏の主要カルチャーメディアでも、近年の地政学的リスクの高まりに伴い『火垂るの墓』を取り上げる特集が急増している。「史上最も心を打ちのめすアニメーション」といった表面的な形容を超えて、戦争の構造的暴力と子どもの犠牲を徹底的に描き切ったリアリズム作品としての評価が揺るぎないものとなった。
文化や言語の壁を超え、世界中の人々が節子の悲劇に涙するのは、そこに政治的な自己正当化やプロパガンダが一切存在しないからだ。ただそこにあるのは、理不尽な時代に翻弄された一人の少女の確かな「生の営み」と、その失われた輝きに対する人類共通の哀悼である。