物語の中盤、静寂を保っていたカオナシが最初に牙を剥き、捕食したターゲットが青蛙だったという事実は極めて示唆に富んでいる。カオナシは本来、自己を持たない「空虚な存在」に過ぎない。しかし、青蛙が持っていた過剰な強欲さと、金への執念を飲み込んだ瞬間、カオナシの内部で欲望のビッグバンが起こる。
つまり、青蛙はカオナシにとって「欲望の教師」だったのだ。偽物の金をエサに油屋の従業員たちを狂喜乱舞させるカオナシの振る舞いは、青蛙の持つ浅はかな価値観がそのまま巨大化した結果でもある。カオナシというバケモノの暴走を引き起こしたトリガーこそ、青蛙の放つ泥臭いエゴイズムであったという構造は、何度見返しても鳥肌が立つほど巧密だ。