世界中でアニマルウェルフェア(動物福祉)の議論が加速する2026年現在、綱吉の思想は驚くほどモダンに映る。欧州で動物虐待防止法が制定されたのは19世紀になってからだが、日本はその200年も前に、国家規模で動物の権利を守る法律を施行していたことになる。これは世界史的に見ても極めて異例の早さだ。
単に「可愛いから守る」のではない。綱吉が目指したのは、命を慈しむ心を通じて、戦国時代の荒々しい気風(武断政治)から、学問や礼節を重んじる平和な社会(文治政治)へのシフトだった。暴力を憎み、命を尊ぶ社会を作るためのトップダウンの教育改革。それがこの法令の真の狙いだったと言える。