表立った交流が途絶えていた期間も、2人の精神的な結びつきが消えることはありませんでした。貴景勝は取材の場で過去を振り返る際、常に貴乃花氏への感謝の言葉を口にし、その相撲美学を土俵上で体現し続けました。
相撲界関係者が口を揃えるのは、貴景勝の「立ち合いの変化を極端に嫌う姿勢」や「勝っても決して土俵上で感情を表に出さない所作」に宿る、貴乃花イズムの継承です。首や膝の度重なる大怪我に苦しみながらも、愚直に真っ向勝負の突き押しにこだわり続けた姿は、かつて満身創痍になりながら平成の大相撲を支えた師匠の生き様そのものでした。
貴乃花氏もまた、メディアのインタビューなどで弟子の相撲について問われると、「貴景勝は武士のような心を持った本物の力士」「私の指導を一番純粋に受け継いでくれた」と惜しみない賛辞を送っていました。頻繁に連絡を取り合うような表層的な関係を超え、互いの立場を尊重しながら遠くから見守り合う、まさに無言の信頼関係がそこには存在していました。